イカ釣りと聞いた時に初心者がまず思い浮かぶのは、エギという特別なルアーを使ってイカを釣る「エギング」かもしれませんね。
本屋さんで並んでいる釣り雑誌の表紙や、釣り関係のテレビ番組などでもエギングは良く見かけますが、生きたアジを餌としてイカを釣るヤエン釣りに関してはほとんど目にすることはありません。
またヤエン釣りと聞くと、ちょっと手を出しにくい特殊な釣りのような印象があるために、初心者はなかなか手を出しにくいのかもしれませんね。
しかしヤエン釣りも知ってしまえば決して難しい釣りではありませんし、餌に生きたアジを使うということからエギングよりも確実に釣果が得られる可能性がある釣りであると言えます。
そしてこのイカ釣りを実際に経験してしまうと、その独特な面白さにハマってしまうことは間違いないくらい楽しい釣りです。
ヤエン釣りをする釣り人は自分達のことを「ヤエン師」や「烏賊(イカ)釣師」と呼んでほぼこの釣りしか興味がないという方も多くいます。
この記事ではそのヤエン釣りの魅力を伝え、これだけ知っていれば明日からでも始められるという事について紹介したいと思います。
ヤエン釣りとは
ヤエン釣りとは、生きているアジを餌として泳がせることから「(アジの)泳がせ釣り」と言うこともあります。簡単に説明すると、アジを餌として泳がせ、イカに捕まえさせる。
無我夢中でアジを食べているイカを近くまで寄せてから「ヤエン針」という針をイカに気付かれないように糸に付け、アジを食べているイカの位置まで糸を伝ってスライドさせ、到達したヤエン針にイカを掛けるというものです。
この説明だけではイメージしにくいかもしれませんので、区切って紹介します。
①針にアジを付ける
アジに掛ける針は専用のものがあります。専用のものでなくても使えますが、アジが泳ぎ回っても釣り糸が捻れないようにするための「ローリングスイベル」が付いている専用針を使うのが勧めです。
支出を抑えたいという方は、アジに針を付けるとともに尾びれの付け根付近を結ぶやり方がありますが、生きたアジに「結び」をつけるのは慣れが必要ですのでここでの紹介は省略し、誰でも簡単にできるやり方に絞って説明します。
ローリングスイベル付き専用針
ローリング・スイベルとは、針と糸の間に取り付ける「自由に回る金具」の事です。これが付いていることによって、アジへの負担が少なく泳ぎ回れるように出来ることと、アジが泳ぎ回ることによって糸が捻れることを防止するものです。
このローリング・スイベルが付いておらず糸が一方向に捻れ続けると、糸が美容室でパーマに失敗したようなクセが出来てしまいます。
この糸についたクセがひどくなると竿を振ってアジを投げる時などに糸が一瞬でグチャグチャに絡まってしまうトラブルが発生しやすくなります。
ローリング・スイベルが付いている専用針をお勧めする理由は上記の通りですが、欠点はアジに針を掛けただけの状態なので、アジの投入時に強く投げると針の部分で魚体へ傷が広がり、アジが弱るのを早めてしまう事です。
アジに針を掛ける箇所
アジの魚体のどこに針を通すかは、次の3箇所が一般的です。これ以外にも、やり方がありますが、アジが弱るのが早まったりするため、特に初心者にはお勧めできません。
下記の3つのような「ちょい掛け」にしておき、アジを投入する時には優しく投げてあげるのが最も簡単かつアジへのダメージが最小限で済むはずです。
背中に針を掛ける場合
アジの背中に針を掛けるのは、3つの箇所の中で最も簡単に付けられると思います。
魚体の中では腹部分に次いで身が柔らかい部分なので、針をつけた後は出来る限り優しく扱うことが必要です。腹に針を掛ける場合に比べると、アジが泳いでいるだけで傷が広がる心配は少ないですが、アジが元気過ぎると身が切れる可能性はあります。
ゼイゴというアジの身体の一番硬い部分に針を掛ける場合
アジには図に示したように、魚体の後半部分、上下の真ん中に数ミリ幅で「ゼイゴ」という固い部分があります。スーパーで売っているアジは捌かれる際に、この硬い部分は取り除かれています。
この硬い部分に針を通すにはちょっとコツがいりますが、少々のことでは針が外れたりすることはなく、魚体の傷も広がりにくいので私はこのゼイゴの部分へ針を掛けることお勧めします。
ただしこの硬い部分は脊椎のほぼ真横にあるため、針を通す際に脊椎を傷つけてしまうとアジが弱るのを早めてしまうため注意が必要です。
お腹に針を掛ける場合
アジのお腹に針を掛ける場合も背中の場合と同じように針を掛けやすいのですが、魚体の中では最も柔らかい箇所であるため傷が広がりやすく、アジ弱るのが早いためお勧めは出来ません。アジの尾へ糸を結ぶことを併用するのが大前提の箇所でしょう。
②アジの投入
アジの投入とは、投げ釣りのように餌となるアジをポイント近くへ投げ入れる事です。遠投のように力を入れ過ぎるとアジの身が切れてしまい、アジへのダメージが大きいので、ゆっくり大きな動作で優しく投げるのがコツです。
またこうすることによって、アジの頭から海面に「ズボッ!」と入っていくのが大事で、アジの魚体が横になった状態で「パーン!」と海面に当たるとアジは気絶するか急速に弱ってしまいます。
力を入れて遠くに投げるのは良くないことが分かって頂けたと思いますが、逆に遠慮しすぎて足元近くに投入するのも良くありません。アジはどうしても横方向へも移動するので、隣で釣りをしている人が居るとすぐに糸同士が絡まってしまいます。
やはりある程度ほど良く遠くに投げる加減が必要です。
③アジを泳がせる
アジを泳がせるとは言っても、基本的にはアジを投入したら竿から出ている糸の方向でアジがどこを泳いでいるのかを見ているだけです。上手な人はアジをある程度コントロールしますが、普通はアジまかせで大丈夫です。
アジを泳がせる時の注意事項①
ただ私はあまりにアジを放置しすぎて、気付いたら本当に足元に帰ってきていたり、アジが横方向の遠くに泳いで行ってしまっていて、隣の釣り人2~3人にご迷惑を掛けてしまったこともありますので、アジの居場所は常に把握しておきましょう。
アジを泳がせる時の注意事項②
アジを泳がせている間には糸の方向の他にもう一つ、竿先を観察しておく必要があります。
アジが普通に泳いでいる場合は竿先が「チョン・・チョン・・チョン・・」とリズミカルに小さく触れています。竿先から出ている糸も同じように張ったり緩んだりしています。
この竿先がきつくカーブするとイカが乗っている可能性が高いですし、動かなくなっているとアジが弱っているか、藻に絡まったか又はひょっとしたらイカが食っているかもしれません。
アジを泳がせている時の面白さ
ここまで読んで頂くと、ただ餌であるアジを泳がせているだけの時間であっても、海の中でのアジが泳いでいる様子を想像出来るようになり、実は非常に面白い時間だということがお分かり頂けると思います。
またアジを泳がせている間、リールから糸が出ていく加減(ドラグ調整)は一番緩く調整し、軽く引っ張られただけでも糸が出ていくようにするのですが、アジが元気だとまるでイカが引っ張っていったような糸の出方をします。
この調整によってアジが糸を強く引っ張ると、リールから「ジジッ・・ジジッ」という音がするのですが、イカがアジに抱きついたことを知るのは、このリールの音で判断するため「イカが掛かったかな?!」という期待感で興奮します。
ドラグ音に慣れてしまって、「またアジか・・」と思っていると本当にイカがきていたりするので気が抜けない時間です。
また「ジーーーッ!」っと長い間音がなっている時は、イカが引っ張っているか、アジが何かから逃げようとしている時の音なのでテンションが上がります(笑)
④イカがアジを捕食
イカがアジを捕食するのには数段階に区分できます。またイカの性格というか、警戒心があるが臆病な小さなイカと警戒心は高いですが外敵の少ない大きなイカとの違いから色々なアタリ(イカが餌を食った兆候)となるので、ここがまたこの釣りの面白い所でもあります。
捕食の段階1
イカはまず自分の足(正確には「腕」と言います。第1腕~第4腕と触腕が各2本)を使ってアジに抱きつきます。
大半のイカはそのまま安心して食べることが出来る場所まで引っ張って行くのでリールのドラグが「ジーーーッ!」と連続音で鳴る明確なアタリとなります。
捕食の段階2
アジに抱きついたイカは次に、アジが動かないようにします。イカの鋭いクチバシでアジの脳天をひとかじりです。アジはこれで即座に動かなくなります。
この捕食段階は、イカによっては抱きつくと同時に行うイカもいますし、遠くへ引っ張って行ってから行うイカもいます。
捕食の段階3
イカはアジを動かなくした後、邪魔をされない安全な場所でアジを食べ始めるのですが、この時、「捕食の段階2」の時はアジを横抱きしている状態ですが、これを縦抱きに持ち替え、アジの尾側から食べていきます。
この捕食状態になってから次の”⑤イカを寄せる”のが理想です。
この捕食状態になるとイカはアジを食べるのに夢中になっていて、こちらがリールを巻いて寄せても気付き難いだけでなく、糸からイカに伝わる人の気配を感じて一旦アジを離しても「自分の獲物」という所有欲から再度抱いてくる可能性が大幅に上がります。
逆にいうと、「捕食の段階1」や「捕食の段階2」の段階でアジを抱いているイカを寄せてきてしまうとアジを離して逃げられる可能性が大きいのです。
⑤イカを寄せる
ここまで読んで頂いたまででは、まだイカが餌であるアジを抱いただけであって、イカはまだ針に掛かっていません。イカを掛ける針を別に投入するのがヤエン釣りですが、この針を投入するのはまだ先の作業になります。
イカを掛ける針(ヤエン針)を投入できる距離に近づけるまで、イカに気付かれないように自分の近くまで寄せてくる必要があります。
どのくらいの距離まで寄せてくるかというと、イカを掛ける針が糸を伝ってスムーズに滑り落ちていく角度が必要であり、竿を立てた時に竿先からアジに繋がっている糸の角度が概ね45°くらいになるまで寄せます。
また角度に係わらず、自分とイカとの間に海藻などの障害物がある場合は、糸を伝ってイカに到達させる「ヤエン針」が途中で障害物に引っ掛かってしまうので、障害物がない場所まで寄せてくることが必要です。
イカを寄せ始めるタイミング
イカを掛ける針を投入できる距離にまでイカを近づける「寄せ」を始めるタイミングは、リールから糸が出ていく音が鳴り終わって(イカが引っ張るのをやめてから)更に2~3分程度経ってからというのが基本です。
要は「捕食の段階3(イカがアジを縦抱きで食べている段階)」での寄せが理想であり、これはイカが無我夢中でアジを食べている状態です。イカを釣り上げた後にアジを確認すると尾から綺麗に腹か胸辺りまでなくなっています。
寄せに失敗してイカに逃げられてしまった後のアジを見ると、アジの脳天だけが綺麗にひと口だけかじられていたり、アジの背や腹に少し傷が付いていたりしているだけであることが確認できます。
寄せ方
寄せ方は普通の釣りのようにリールをじゃんじゃん巻いたりはしません。まずはアジを泳がせる時に調整していた”ゆるゆる”の糸が出ていく調整を少しだけ締めます。
この時の糸が出ていく調整加減は、必要以上に糸が出ていかず、かつ、イカがアジを抱いたまま逃げようとする時に違和感なく糸が出ていく程度です。この辺の微妙な加減は経験してみて初めて分かります。そんなに難しいものではありません。
リールの糸が出る加減を調整したならば、片手で糸を竿に押し当てるように軽く握った状態で竿をゆっくりと上方に立てながら寄せてきます。
竿を立て終わったら次に竿を再度前方(イカの付いている方向)に倒しながらリールを巻きます。これを繰り返しながら、竿を立てた状態で糸が45°になるくらいまで引き寄せます。
寄せている間にイカが糸を引っ張ったら、竿に糸を押し当てている手をすぐに離して自由に走らせ、再度停止してしばらく経ったら寄せを再開します。
もしイカが途中でアジを離してしまったら、急に軽くなったり、真っ直ぐに張っていた糸が緩んだりすることで判断できます。
こういった場合は、すぐには諦めないでしばらくそのまま放置します。時間にして5分程度は放っておくと、イカが警戒心を解いて再度アジを抱くことが多々あります。
あくまで勝負どころは、イカに気付かれないように寄せ切ることです。
寄せで苦労する又は失敗する可能性が大きいのは、イカがアジを抱いて藻に潜ってしまう場合です。
この場合は、イカが藻から出て来るようにリールをゆっくり巻いて寄せるか、または思い切ってリールを巻いてイカを藻から抜き出すようにし、仮にその時イカがアジを離したとしても再度餌のアジを抱くことに期待するかです。
よって「捕食の段階1(イカがアジに抱きついただけの段階)」や「捕食の段階2(イカがまだアジを横抱きしているだけの段階)」の状態で、糸を好きなだけ引っ張らせて遠くへ行かせ過ぎてしまうと海藻に深く潜られてしまう可能性が大きくなってしまうので注意が必要です。
リールから糸が出すぎると思ったらイチかバチかで糸が出にくいように、糸が出ていく加減を調整するか又は止めてしまう判断もこの釣り独特のイカとの駆け引きになります。
⑥ヤエン針を投入
竿を立てた状態で糸が45°くらいの角度になるまでイカを寄せたらいよいよイカを掛けるための針、「ヤエン針」の投入です。
ヤエン針は製造メーカーによって色々なタイプがありますが、好みで大丈夫です。値段はあまり釣果に影響しません。私は最も標準的ながら実績のある「ヤマシタ」というメーカーのMサイズをメインで使っています。
800g以下の小型のイカがメインの場合はSサイズ、2kgクラスの大物が掛かっているのを確信している時はLサイズを使用します。
イカは水中で自分に近づいてくる針に気付くとアジを離して逃げてしまうので、”大は小を兼ねる”論は避けた方が無難です。あくまで大きさに応じた針サイズを使うことをお勧めしますが良く分からない場合はMサイズだけ準備しておけば良いでしょう。
ヤエン針を糸に付ける
イカが食べているアジが釣りの餌であるということに気付かれないように、そっと静かに竿を倒して竿先を自分の手元(又は針を付けるのを手伝ってくれる人の手元)に持ってきます。
針に、竿先から出ている釣り糸を通します。手順は下の写真を見れば大体のイメージが付くことと思います。(針の製造メーカーによって形は様々ですが、どのメーカーも簡単に糸を通すことが出来るように作られています。)
ちなみに、針は写っていませんが写真の左側となり、写真右側が竿先側ということになります。装着後、竿を立てた時は下の写真のようなイメージで、これをイカのところまで下の方に滑らせていきます。
ヤエン針の装着は、イカを寄せるためのやり取りで興奮気味の精神状態で行うことになるので慌てて逆さに装着してしまったり、環に糸を通し損なったりすることがあります。
自宅や釣場で釣りを始める前に一度練習をして装着要領を確認してくと安心です。
竿を立てて針をスライドさせ、イカの元に到達させる
針に糸を通し終わったら、針から手を離し、ゆっくり竿を上に立てつつ、針を海面方向に滑らせます。こうすることで海中に入った針が滑るようにスライドしてイカの元に到達します。
イカの元にヤエン針が到達すると、「ググッーー!!」っという感じで強い引きがあります。これが針がイカに到達した合図です。
しかしここで慌てて竿を後方にグッと引いてイカに針を強く掛ける動作をしてはいけません。イカは針を見つけたためにアジを抱いただけの状態で逃げようとしているだけかもしれません。ここで針を強く掛けようとしてしまう釣り人もいますが、まだ針が到達する前の事が多いです。
針が掛かっていない状態でイカがまだアジをあまり食べていないと、釣りであることに気付かれて直ぐに逃げられてしまいます。夢中でアジを食べていて釣られていることに気付かなかったとしても、針が足1本に掛かっている程度であることも良くあることです。
ではどうすれば良いかというと、イカが糸を引く時は、イカに不自然さを感じさせないように自由に糸を引かせ、イカが止まったら、イカに悟られないようにゆっくりと糸を寄せる。
お気付きかもしれませんが、針投入前の「寄せ」の要領になります。
しかしちょっと違うのは、針がしっかり到達した状態になっていると、イカは逃げることを優先するのでいつまでも引いていきます。
あまり遠くに行ってしまうようなことがあれば糸が出にくいようにリールを調整してみたり、イカに軽く針を食い込ませるように竿をクイッと引いてから、強気でリールを巻く判断も必要になります。
イカは足1本でも針に掛かっていれば、上手に寄せれば取り込みまで持ち込めることも良くあります。安心してリールを巻けるのは、イカの胴体にガッチリと針が掛かった状態の時だけなのですが、この状態を確信できるのは海面近くまで寄せてからになります。
釣りにおいてはビギナーズラック(初心者に起こる幸運)は不思議なほど起こるので、初心者のうちは何も考えずにやっても釣れることが多いのですが、ビギナーではなくなる頃になると嫌になるくらい逃げられることが多くなります。
なぜかは分かりませんが多くの釣人がそうですし、私もそうでした。
⑦イカに針を強く掛ける(アワセ)
慎重に、だけど熱くイカと戦いながら海面近くまでイカを釣り上げてくると、いよいよイカの姿が見えるようになります。
ここでしっかり次に述べる条件を確認し、条件が整っていれば、初めてイカに針を強く掛けてイカに引導を渡します。勝利宣言のようなものですかね(笑)
その条件とは、「④イカがアジを捕食」で述べた捕食の段階3の状態になっていることを確認したときです。すなわちイカがアジを「縦抱き」していることを確認したらアワセのためにリールのドラグをきつく締め、やや大きめに竿を立てるようにしてアワセます。
アワセが成功するとイカは水中で「墨」を吐きます。墨を吐いてもイカが針から離れることなく、竿が強くしなってイカが引いていれば間違いなくガッチリとイカに針が掛かっています。
あとは取り込みまでイカの強い引きを味わいながら安心してリールを巻きましょう。
⑧取り込み
イカの取り込みは、できれば誰かに手伝ってもらいましょう。一緒に釣りに同伴している人がいなくても、周囲の釣り人に一声かければ快く手伝ってくれるはずです。
ただし取り込みで失敗し、足元まで来たイカに目の前で逃げられてしまうことも結構あるので、手伝ってくれた人には取り込みに失敗しても笑ってお礼を言う心づもりはしておきましょう(笑)
周囲に人がおらず、どうしても自分一人で取り込みをする必要がある場合は網よりもギャフという鉤爪で引っ掛けて取り込む道具が有利です。このことは別記事でも紹介しています。
ギャフではなく網で取り込む場合は、イカの頭側から網を被せられるようにして待ち構えます。イカは脚の方向へジェット噴射して頭の方向へ泳ぐからです。
またイカは網が見えると最後の力を振り絞って逃げようとするので、まだイカを取り込める距離にまで寄せ切っていない時に網を先に海面に浸けておくのは厳禁です。
海面に浸けるのはタイミングよく、最小限の時間にする必要があります。取り込みは釣ること以上に経験が必要かもしれませんよ(笑)
釣りに必要な道具
竿
竿は専用のものが使い易いですが、磯竿を使っている釣り人も多く見かけます。
5m前後の長さのものが主流ですが、より長い竿の方が竿を立てた時に糸との角度が付けやすく、イカが遠くにいても針をスライドさせやすいです。ただ長すぎると扱いにくいということもあります。
専用竿の利点は、竿先と竿の一番太い部分が磯竿と比べて若干強くなっていることくらいだと思います。これによりアジが投げやすくなっていることと、イカの重さに対して扱いやすくなっています。私は専用のものを使っています。
リール
リールに関してはヤエン釣り専用のリールを使うことをお勧めします。理由は、他の釣りが魚が逃げようと糸を引いた時にリールに巻いている糸が、どのくらいの力が掛かれば出ていくのかの調整を最初に1回程度やっておく程度で済みますが、この釣りにおいては、
- アジを泳がせている時
- イカがアジを抱いた状態で寄せてくる時
- イカに針をしっかりと掛ける時
- イカに針がしっかりと掛かってから引き寄せてくる時
などの時と、更にその時々にも微妙な調整が必要で、その調整をするダイヤルの位置が普通のリールとは違う位置に工夫されているのです。
通常のリールは、リール前面に付いているダイヤルを回すことでしか、この調整は出来ません。これは魚釣りなどでは、対象魚に応じて一度調整してしまえば、後はそんなに調整する必要はないからです。
これに対して専用のリールは、リールの後ろ側に2種類のダイヤルが付いており、場面に応じて、イカが引いた時に糸が出ていく力の調整を瞬時にかつ微妙な調整が出来るように設計されています。
①のレバーを左右に倒すことによって、イカやアジが糸を引いた時に、どれほどの力が掛かれば糸が出ていくのかの調整を瞬時に、ほぼゼロからほぼ固定に近い状態まで調整可能です。
①のダイヤルを左一杯に倒した状態(糸が出ていく力は、ほぼゼロの状態)で②のダイヤルを調整することにより、アジを泳がせている時の微妙な調整を行えます。
専用リールの主な製造会社は、「シマノ」と「ダイワ」があり、調整のためのダイヤルが付いている位置などが違いますが機能的には同様です。自分の好みで選んで問題ありません。
糸
糸もヤエン釣り専用のものがありますが、これは好みで良いと思います。ただし、糸には素材の違いによる種類があり、どんな糸を選べば良いかを判断するのには、糸の海水に対する重さや特徴は少し知っておく必要があります。
また主な3つの種類の材質で紹介しますが、改良やコーティングの進歩によって年々各材質の弱点を克服した製品が出ていますので、基本的な事項として読んで下さい。
ナイロン製
いわゆる普通の釣り糸。
- 値段◎
安い - 比重(藻などへ絡むリスクに影響)×
海水より重く沈む - 伸び(主に感度に影響)×
伸びるため、感度が悪い。糸に手を添えてイカの気配を感じたい時などに不向き。 - 耐摩擦性(糸の耐久性に影響、イカ釣りでは重要な要素)○
最も標準的なもので、耐久性は普通 - 対紫外線(長期間使用時の劣化具合に影響:コストパフォーマンス)×(◎)
劣化しやすく、毎シーズンの交換を推奨。ただし安いのでコストパフォーマンスは良い。 - 結び易さ(扱い易さに影響)◎
結びやすい
フロロカーボン製
- 値段△
やや高い(専用品、改良品は更に高い) - 比重(藻などへ絡むリスクに影響)△
海水より重く沈む(ナイロンよりは比重が軽い) - 伸び(主に感度に影響)○
やや伸びる程度であり感度も得られる。 - 耐摩擦性(糸の耐久性に影響、イカ釣りでは重要な要素)◎
ナイロンよりも耐久性が優れる。 - 対紫外線(長期間使用時の劣化具合に影響:コストパフォーマンス)△(○)
毎シーズンの交換を推奨するものの、良い(値段の高い)製品であれば数年保つ。(経験測(笑)) - 結び易さ(扱い易さに影響)○
やや硬く、ナイロンよりはやや結びにくく、PEよりは結びやすい。
PE製
- 値段×
高い(専用品、改良品は更に高い) - 比重(藻などへ絡むリスクに影響)◎
海水より軽く水に浮く(風の影響を他の2種類より受けやすいデメリットはある) - 伸び(主に感度に影響)◎
伸びないため感度が非常に良い。ただしイカに対して針を強く掛ける動作をすると伸びがないため衝撃が直接伝わってしまい身切れしてしまうため、必要であれば「リーダー(ナイロンなどの糸を先端に1m程度継ぎ足す糸)」を装着する。 - 耐摩擦性(糸の耐久性に影響、イカ釣りでは重要な要素)×
細い繊維が集まってできているので摩擦に弱いが、ほとんどの製品がコーティングを施し耐久性を上げている。ナイロンやフロロカーボン製より耐久力のある製品もある。「伸び」の特徴と併せ摩耗が気になる場合は「リーダー」を装着する。 - 対紫外線(長期間使用時の劣化具合に影響:コストパフォーマンス)◎(○)
毎シーズンの交換を推奨するものの、普通の値段の製品であれば数年保つ。(他人談(笑)) - 結び易さ(扱い易さに影響)×
コーティング剤が使われていることもあり結びにくい。基本的な「結び」の知識は必須。結んだ箇所にスプレーし、ほどけにくくする商品もある。
冒頭でも言いましたが、結論は好みで問題ないです。高い糸を無理して買う必要もないですし、安い糸で釣れないということもありません。
あえてお勧めするならば、私はフロロカーボン素材の糸を使っています。ナイロンに似た扱いやすさと感度の良さからイカとの駆け引きを十分に楽しめるからです。
私より大物を釣りまくっている大御所はPEをリーダーなしで使っています。私がアドバイスしている後輩は、ナイロンで釣りまくっています。
アジ用針
冒頭の”①アジに針を付ける”でも図示説明しましたが、イカの餌となるアジに糸を付けるための針です。
アジに付けるための針とは言ってもご覧のような”釣り針状”の物なので、たまに魚が釣れることがあります。写真はアジに掛けるための専用針ですが高価なため、クロダイ釣りに使用する安価な針(チヌ針)を使う方も多くいます。
このような釣り針を餌であるアジをつないでおくことに使っているため、友人は「スズキ」が釣れてましたが、私はなぜか「アナゴ」が釣れてしまって大変な思いをした経験があります。アナゴってウミヘビみたいだし”噛む”し、釣れると大変なんですよ(笑)
ヤエン針
今回の記事中の「ヤエン釣りとは」ー「⑥ヤエン針を投入」で説明しています。餌であるアジに掛けておく針に対し、イカを掛けるための専用針です。
竿置き
専用のものがあれば非常に便利ですが、なければ普通の三脚タイプの竿置きでも代用可能です。専用のものは結構いいお値段です。私は持っていますが(^^♪
専用のものは堤防などの高い釣り場所から、竿先を下げた状態で置けるようになっています。こうすることによって次のメリットがあります。
- 糸が風の影響を受けにくい。
- アジが負担なく泳げる。
- イカが餌であるアジを抱いて引っ張っていく時に自然に糸が出て、イカに釣りと気付かれにくい。
- 自然と糸が出ていくので竿に掛かる負担を軽減する。
たまに竿を直置きしているのを見かけますが、竿を踏んで破損してしまう可能性がありますし、通行する他の釣り人の迷惑にもなるので竿置きは何かしら準備をしておいたほうが良いでしょう。
アジ運搬用バケツ
アジを元気なまま釣場所へ持っていくためのものです。大きな釣餌屋などではビニール袋に酸素を注入して運搬出来るようにしてくれますが、地方の小さな釣餌屋ではそこまでしてくれません。
アジは遠距離から車などで持ち込むより、釣りをする場所に近い釣餌屋で入手したほうが有利だと思いますので運搬用のバケツを用意することをお勧めします。酸素供給用の電動ポンプも別売りであるので併せて必要でしょう。
また専用の物も売られており、運搬のみならず水流を作ることによって現地での保管にも耐えられる製品があります。私も持っていますが、ほぼ使いません。
アジの運搬には、アジにストレスが少ない大きめのソフトビニール製のバケツを使い、現地では後述するスカリに移し替えています。
スカリ
アジを現地で保管するためのものです。バケツに穴や網の蓋などで通水性があるもので、現地で海水に沈めてアジを活かしておくものです。
上述したバケツでは、どうしても現地の海水温、酸素濃度などに差ができます。アジは出来るだけ健全な状態で長時間保管する必要があるので、現地の海水に慣らすためにもスカリを準備することをお勧めします。
こうすることで長い時間アジを生かせる事ができるだけでなく、活きのいいアジを泳がせる事でイカの食欲をそそることができます。勝手に期待しているだけかもしれませんが(笑)
アジ掬い用網
アジをバッカンやスカリから1匹ずつ掬い出すための道具で、金魚を掬うようなものなら見たことがあるのではないでしょうか。
アジに限らず魚は、人の手の体温で火傷してしまうと言われています。実際、むやみに素手で掴み取っているとアジはすぐに弱って死んでしまいます。
釣具屋で必ず売っていますので忘れずに用意しておきましょう。
イカ釣りのマナー
別記事でまとめていますので、まだご覧になっていない方は是非一読してみて下さい。
まとめ
イカ釣りの一つであるヤエン釣りについて長々と記事にしましたが、一つ一つ理解すれば決して難しい事ではありませんし、やり方もやってみれば何とかなるものです。
それにこの記事を読んでいただければヤエン釣りが如何に他の釣りとは違う楽しさがある釣りであるかを理解して頂けたと思います。
是非チャレンジして下さい!
何か疑問や質問があれば、気軽に問い合わせて下さい。個別にお答えしたり、記事にして紹介したいと思います。